東京ディズニーリゾート(TDR)をビジネスの視点から分析する。

TDRは何故楽しいのか?その仕掛けをTDR好きの筆者が様々な視点からお話しします。

第19回:セイフティーについて(その1)

第6回でTDRの行動規準についてお話しましたが、これからは、しばらく、行動規準である「S」「C」「S」「E」がどのように実践されているかをお話します。

そもそも行動規準というのは、企業において、役職員がどういうように行動すれば良いのか、一方、企業側からすれば、役職員にどのように行動してほしいのかを示したものです。そして、行動規準は、その企業の経営理念に沿って作られています。逆に言えば、役職員が行動規準通りに動けば、企業理念は自ずから実現できるということです。

ほとんどの大企業では、経営理念や経営方針及び行動規準というものが定められています。しかし、正直、その通りに行ってない企業も多くあり、そういう企業は結局何らかの問題を生じる(経営理念に沿わなくなるのですから当然)こととなります。また、経営理念を作った創業者が元気な内はまだ良いのですが、それが二代目、三代目に移るにつれ、徐々に創業当時の経営理念が失われ、利益優先に奔ったりしていきます。経営理念や行動規準を徹底し、維持し続けるのは極めて難しいことなんです。でも、それをやり遂げて行ける企業がお客様に選ばれた企業として勝ち残って行けるのであり、その代表格がTDRです。(他にもセブンイレブンなども経営理念が徹底されています)

TDRの行動規準は、以前もお話したように、「SCSE」と極めて簡素な内容になっています。他の企業の行動規準を見るととてもじゃないけけど、覚えきれないような字句がズラズラ並んでいるところが多いんですが、TDRは極めて簡素。だからこそ、全役職員へ浸透していくことが出来るんだと思います。しかも、簡素なので薄っぺらな内容なものかというと、極めて良く考えられていて、奥が深い。正に、お手本とすべき行動規準であると思います。

 

では、今回は、まず、「S」、つまり、安全性からお話を始めます。

 

TDRの行動規準のSCSEは重要な順番で並べてあると言いましたが、「S」安全性はTDRにとって、最も大事なものと位置づけられ、全てに優先して実践しなければならないものです。何故なら、危険な場所では楽しくないからです。人は、安全だからこそ心から楽しむことができるのです。

TDRの安全性は「設備面」と「行動面」、この二つに区分できます。

「設備面」での安全性とは、ゲストを危険な目に合わせないようパーク内の設備には様々な安全対策が施されているということです。

まず、パーク内にあちこちある岩を見て見ましょう。

一見、でこぼこになっていて、如何にも触ると怪我でもしそうな感じがしますが、実際触って見ると、岩の表面はスベスベになっています。つまり、ゲストが岩に触れて怪我をしないように加工されているのです。

また、ウエスタンランドクリッターカントリーにある木の柵ですが、先っぽが尖がった木がずらっと並んでいます。しかし、近寄って良く見て見ると、上の尖った先は全て削られていて、危なくないようになっています。

極めつけは鉄の柵です。私が知っている限りでは、ホーンティドマンションとアドベンチャーランドのフレンチクオーターの裏側の階段の2か所に鉄の柵があります。昔風に造ってあるので、先ほどの木の柵とは違って先が鋭くとがっています。柵を触って見ると鉄でできていますので、当然堅いんですが、先っぽを指で触ると・・・、あーら不思議、鉄のように見えた尖った先っぽがグニャッと曲がってしまいます。そうです、先っぽはゴムで作られていたんです。柵の柱の部分は鉄ですが、先っぽだけはゴムで作られているんです。黒く色が塗られていて境目も分からないようになっているので、触らないと全く気付かないんですね。しかも、フレンチクオーターの裏側の柵などは人があまり通ったり、触ったりするところではありませんが、このような場所にまで手を抜かない安全策が施されているのに感心しました。

また、これも細かい工夫ですが、ウエスタンランドにおいてある幌馬車ですが、その車輪に注目して下さい。きちんと車輪止めまでしてあります。決して動かないだろうと思われる設備なんですが、そこまで配慮しているんですね。このように、ゲストが怪我をせずに楽しく過ごせるよう、様々な設備の工夫がしてあります。これを探すだけでもなかなか面白いものですよ。

パーク内の柵の高さにも注意が払われています。パーク内ではゲストが写真を撮ることが多いんですが、その際、気が付かなくて足を引っ掛けて転ばないように、柵の高さは腰の高さ以上になっています。そうしておけば、後ろへ転げることはありませんよね。

また、TDR内外に植えてある樹木ですが、大きい木には全て鉄のロープで支えがしっかりとされており、強風でも倒れないようになっています。更に、大きい所で言えば、TDRの地盤は地震対策として付近の建築物と比べて、基礎となる杭が深く打ち込んであるため耐震性が優れているように作られています。

それから、これはあまり知られていませんが、オリエンタルランドは自社で消防車を2台持っています。勿論、本物です。更に、キャスト募集を見ると、職種の中にファイヤーキャストというのがあるんです。つまり、消防士さんですよね。つまり、TDRは万が一の為に自分の消防署を持っているということななんです。一般の企業であれば、防災対策としては、法令で定められた防災設備と定期的な防災訓練で対応しているのが普通ですが、TDRでは、莫大なコストかけて防災対策を行っているんです。凄くないですか?TDRで火災が起こるなんて普通考えてもほとんどありません。そのためにお金を掛けていては無駄だというのが一般的な企業の考え方でしょうが、TDRの場合は、安全性第一という行動規準があるからこそ、敢えて自前で消防団を設置しているのです。・・・・・続く