東京ディズニーリゾート(TDR)をビジネスの視点から分析する。

TDRは何故楽しいのか?その仕掛けをTDR好きの筆者が様々な視点からお話しします。

第18回:TDRの障がい者のゲストへの取組

 今回は、TDRの障がい者のゲストへの取組について考えてみます。

 TDRに行かれると車いすに乗った方等の障がい者のゲストが多いことに気が付きます。その事実が、TDRの障がい者に対する対応の評価を表した結果であると思って差し支えないと思います。つまり、TDRは障がい者の方々へ優しい、だから多くの障がい者の方々が訪れるのです。

 

 TDRの障がい者に対する基本的な姿勢が表れているのが、「障がい者」という表記です。一般的には「障害者」と表記されますが、TDRでは、「害」ではなく、「がい」となっています。そうです、「害」という文字が入ると如何にも障がい者の方々が害であるかのような悪いイメージになるので、あえてひらがな表記にしているのです。最近では、一般企業においても、「障害者」ではなく、「障碍者」などと表記するところも増えていますが、大変好ましい事だと思います。

では、TDRでは、障がい者の方々へ具体的にはどのような取組をしているのでしょう。

一般的に障がい者の方々へのサービスとして思い浮かぶのが、障がい者割引です。つまり、障がい者の方々は、健常者の方がと比べて安価に楽しめますというものです。しかし、TDRでは、障がい者割引はありません。障がい者に優しいのであれば、割引があって当然だろうと思われる人も多いと思いますが、TDRではあえて割引はしていません。

何故でしょう。

それは、『TDRでは、障がい者の方々も健常者の方々と同じように楽しんで頂けます。ですから、当然割引は致しません。』という強い意思表示の現われだと思います。つまり、それだけ、障がい者対応について自負しているという裏付けなんです。考えてみれば、同じサービスが受けられるのであれば、割引をするということは逆差別にもなりかねませんよね。

 では、どういうような対応をしているんでしょう。

 まず、障がい者(高齢者を含みます)は、キャストに言えば、「ゲストアシスタントカード」がもらえます。ゲストアシスタントカードというのは、そのカードをキャストに見せれば、アトラクションに乗る際など、キャストが様々な対応をしてくれるということです。

 私も数年前に足の悪い高齢の母とディズニーシーを訪れ、一緒にゴンドラに乗ろうということになりました。しかし、ゴンドラに乗るには橋を渡って船着き場へ行かねばならなかったのですが、足の悪い母には橋を渡るのは負担です。その時、キャストの人が声を掛けて頂き、通常の船着き場とは別の近い船着き場に案内して頂き、しかも、乗船時には、専用の補助階段を用意して頂き、問題なくゆっくりと乗船することができました。更に、感心したのは、その場所は、他の健常者の方々とは別の専用の乗り場で、しかも、一番最初に案内して頂いたことです。つまり、母も私も健常者のゲストを待たせないように気を遣いながら焦って乗ったりすることなく、安心して乗船することができたということです。障がい者の方々は何かしたいんだけど、自分達がそうすると時間がかかったり、係の人を呼んだりして、一般の人に迷惑がかかるのでやめておこうという気持ちになることがあると思いますが、TDRでは、そういう気遣いをしなくて済むように配慮してくれているのです。大変ありがたいですね。

 ただ、障がい者だからといって、優先的に乗船できるのではありません。当然、健常者と同じ待ち時間で対応しているのです。

 

 また、TDRのモンスターインクでは、車いすの方々専用の乗り場が別室に用意されていて、そこまでキャストが案内してくれます。そして、そこでゆっくりと乗り降りできるような仕掛けになっています。この動画はTDRの公式ホームページに載っていますので、是非、ご覧ください。

  ただ、新しいアトラクションについては、モンスターズインクのように別室が設置されて対応ができるのですが、残念ながら古いアトラクションにはそういう対応がありません。例えば、ホーンティドマンションですが、ここでは健常者の方々と一緒の乗り場で車いすの方をキャストが支えて乗り物へ移動させています。しかも、ホーンティドマンションを経験された方はお分かりになると思いますが、ゲストは一旦動く歩道に乗り、そして、ガイドレールを走っている動いている乗り物へ移動するようになっているため、健常者でも急いで乗らないと間に合わないと焦ることもあるようなアトラクションです。ですから、車いすの方々が乗り物へ移るには時間がかかるので、どうしても一旦乗り物を止めなければなりません。つまり、館内の全ての乗り物がストップしてしまうことになるのです。

 では、そういう時にTDRではどういう対応をとるのでしょう。

 他のゲストにとっては、急に暗闇で乗り物がストップするので、事故が起こったのかと不安になります。ですから、何等かでお伝えしないとならないんですが、そういう時には、雰囲気を壊さないような静かなトーンでこういうアナウンスが館内に流れます。「今、お化けがいたずらをしてしまったんで、ストップしてしまったんだ。しばらく、待ってるんだよ。」こういうアナウンスを流されると、止まった方もにこやかになりますし、また、止めてしまった方も負担が軽くなりますよね。素晴らしい対応だなと思います。

 

 他の対応としては、インフォメーションセンターには、触地図とキャラクターの人形が置かれ、目の不自由な方々が手で触ってパーク内とキャラクターの形を確認できるようになっていますし、耳の不自由な方々には、手話のできるキャストが配置されており、その旨を伝えると対応してくれます。

 更に、TDRのパレードルートには、2か所障がい者の方々専用の特別鑑賞エリアが設置され、車いすに座ったまま楽しめるようになっています。特に、TDSでは、車いすの方々には特別鑑賞エリアの手すりが丁度目線に入ってショーの邪魔になるので、可動式になっており、ショーがあるときはその手すりが邪魔にならないように動くような仕組みになっています。

 それから、障がい者の方々が困られるのはトイレですが、TDRも最近の一般の施設と同様広いトイレになっていて、パウチ対応もしてあります。しかし、TDRで感心するのは、便座の位置です。一般的には便座は壁側に寄って設置されていますが、TDRでは、真ん中に設置してあります。そして、補助の手すりが左右両方についています。つまり、便座に移動するときに右利きの方も左利きの方もおられるので、その両方に対応できるように設置してあるのです。当然、その分スペースを取ることとなるんですが、TDRでは、そこまでお金をかけて対応しているということなんです。ここまで、丁寧に障がい者対応をされれば、健常者と同一料金でも当然文句を言われることはないでしょう。

 全てのゲストにハピネスを提供することがTDRの経営理念ですが、障がい者への対応をみても、その理念が実践されていることが良く分かります。

 社会全体がTDRのような対応をするようになれば、障がい者の方々の行動範囲、生活範囲も広がり、より住みやすい社会になるのではないかと思います。