東京ディズニーリゾート(TDR)をビジネスの視点から分析する。

TDRは何故楽しいのか?その仕掛けをTDR好きの筆者が様々な視点からお話しします。

第17回:非日常性を生み出す遮断効果

   前々回のブログでは、外界との遮断についてお話しましたが、そもそも、何故、遮断が必要なのでしょう?

   それは、TDRのビジネスモデルである非日常性を守るためです。

 遮断については、物理的な遮断と心理的な遮断があります。物理的な遮断とは、視覚と聴覚を外界に触れさせないようにすること、また、心理的な遮断とは日常的な事柄を思い出させず、常にハピネスな気持ちにさせとくということです。

 

 同じような場所が日常でもあります。それは、映画館です。映画館では、真っ暗闇な空間にすることで、外の明るい光から視覚を遮断し、大きな音響を響かすことで聴覚を遮断してあります。だから、観客は映画に没頭することができ、映画のストーリーに感情移入し、中には主人公に成りきったり、ストーリーに感動したりすることができるのです。 

 つまり、ウオルトは、映画館と同じような環境をディズニーランドの中に作り上げて、ディズニーの世界の没頭させている訳です。これも、ウオルトが映画人たる所以です。 

 心理的な遮断、つまり、ゲストを常にハピネスにすることはどうやっているのでしょう?それは、キャストの対応です。キャストはゲストが楽しんで過ごせるように精一杯のおもてなしをします。そして、そのおもてなしがゲストにハピネスを提供し、日常を忘れさせる、これが、心理的な遮断効果です。逆に言えば、キャストの対応が悪ければ、折角、非日常の世界を楽しみにしてきたゲストを一瞬にして、現実の世界に引き戻してしまうことにもなりかねないのです。それ故、キャストの教育については、徹底して行われているのです。人財の育成については、後日詳しくお話したいと思います。

 

 また、遮断については、パーク内と外界だけではなく、パーク内でも行われています。

 TDRには、それぞれのテーマランドがあります。例えば、TDLには、ファンタジーランド(おとぎの国)、トゥモローランド(未来の国)、アドベンチャーランド(冒険の国)、ウエスタンランド(開拓の国)、トゥーンタウン(おもちゃの街)、クリッターカントリー(小動物の国)、ワールドバザールの7つです。つまり、TDLにおいては、7つの違ったテーマの映画が上映されているということになります。ということは、それぞれが、違ったストーリーや設定ですから、それが重なり合っていては、折角の雰囲気が台無しになってしまうということです。

 

 そのための工夫も様々されています。しかし、その工夫はさりげなく行われていますので、なかなかゲストには分からず、何時の間にかそのテーマランドの雰囲気に溶け込むような仕掛けになっているんです。

 その工夫をご紹介しましょう。

 まず、視覚面ですが、テーマランド毎に建物等のデザインが違い、それぞれのエリアに相応しいデザインになっています。それは、建物のような大きな物に限らず、ゴミ箱、水飲み場、消火器の置き場所、ベンチなどの小物、更に、植えてある植物や木々に至るまで、良く観察してみると全てテーマランド毎に異なっているのがお分かりになると思います。

  一般的には、こういうものは、統一化した方がコストが安くつくことは間違いありません。しかし、TDRでは、雰囲気を守るためにわざわざ莫大なコストをかけて逐一異なるデザインのものを作らせているんです。

 また、キャストの服装もエリアごとに異なります。しかも、キャストは別のエリアに入ることが基本的に禁じられています。何故なら、例えば、ウエスタンランドカーボーイの服装をしたキャストがトゥモローランドでウロウロしているのをゲストが見たらどう思うでしょう?多分、違和感を感じて、折角の雰囲気を壊してしまうことでしょう。唯一、エリア内をウロウロすることが許されているのは、掃除をするカストーディアルだけです。カストーディアルは白い制服になっており、どこのエリアも同じ格好に統一されています。

 次に聴覚です。これも、何気なく園内を歩いているだけでは気づかない、というほど自然になっているということです。TDR内にはどこへ行っても音楽が耳に入ってきますが、実はエリアごとに全て音楽の種類が違います。ワールドバザールでは行進曲風なもの、ウエスタンランドではカントリー調というように。

 しかし、エリアごとに違う音楽が重なり合い、不協和音となって耳ざわりになることはありません。音量の調節、スピーカーの配置や様々な建物を設置することで音楽をエリアごとに遮断できるように設計されているからです。しかし、ただ1か所、どうしても音が重なりある場所があったそうです。それは、アドベンチャーランドウエスタンランドの境です。では、その場所は一体どうなっているのでしょう?実際に行かれて確かめて頂きたいのですが、実は、その場所には滝があります。そして、そこには水が大きな音をたてて流れており、その音が音楽が重なり合って聞こえるのを遮っているのです。

  このように、遮断に徹底的に拘っているからこそ、夢と魔法の国の雰囲気が保たれ、楽しく過ごすことができるのです。心理的な遮断であるキャストの行動については、今度お話します。