東京ディズニーリゾート(TDR)をビジネスの視点から分析する。

TDRは何故楽しいのか?その仕掛けをTDR好きの筆者が様々な視点からお話しします。

第15回:外界との遮断

 前回のブログでは、シンデレラ城が鮮やかに目に入ってくるように遠近法で仕掛けがしてあることをお話しました。しかし、シンデレラ城を印象的に目に焼き付けるようにするためには、外界から他の物体が視界に入ってこないようにゲストの視覚を遮断することも必要です。このことは、以前、東京ディズニーランドの立地が、富士山麓ではなく、浦安に選ばれた時にも触れましたが、東京ディズニーランドではあらゆる外界のものをゲストの視界にいれないようにパークの設計が考えられています。

 

 第一に、パーク敷地内の盛り土です。舞浜駅から、東京ディズニーランドのエントランスに向かって歩くと坂道になっています。何故、坂道なのか。それは、外界との視界を遮断するために、盛り土をして、パーク内の敷地を一段と高くしているからです。ですから、外から、パーク内を見ようと思っても、普通の状態では決して見えないようになっています。逆に、パーク内から外を見ようと思っても、回りにはアトラクションの建物や木々が配置されていますので、見えないような作りになっており、内外の視覚が遮断されているのです。

 

 第二に、パーク外には、ホテルが立ち並んでいますが、このホテル群はどれも高さが首都圏のホテルとしては低くなっています。実は、ディズニー本社が周辺のホテルの建設に当たっては、高さ制限を行い、決してパーク内の建物より高くならないように設計させているからです。TDRで一番高い建物は、ディズニーランドではシンデレラ城、ディズニーシーではプロメテウス火山であり、どちらも51mの高さです。ですから、外の建物についても、その高さより高くならないように厳しく規制をかけて、外からも内からも見えない仕掛けになっているんですね。

 

 第三に、都市伝説のように言われているのがトンネルの存在です。TDR内には、確かにトンネルが存在します。以前、パーク内を歩いていて、ぽつんと立っている家の中からダンサーキャストが急に出てきたことがありました。その家は外とはつながっていない訳ですから、バックステージからトンネルを潜り抜けてきて、出てきたとしか考えられません。また、パーク内のレストランへの飲食の材料や飲み物も配送についても、一切パーク内を通っている姿は見たことがありませんので、そういう配送も全てトンネルで行われており、内外の遮断の役割を担っているのです。

 

 しかし、園内への配送はトンネルだけで全てできませんので、何らかの手段でパーク内に運び込む必要がありますし、キャストも送迎する必要があります。実は、東京ディズニーランドには、配送トラックやキャストの送迎バスが走る外周道路があります。そして、1か所だけ外周道路とパーク内がつながっている所があります。ですから、その場所からは外周道路の一部分が見える訳です。その場所は、ウエスタンリバー鉄道に乗ると分かるのですが、駅を出発して間もなく見えてくる次の寂れた駅の手前です。その時に左側を良く見ると、踏切があるのが一瞬見えます。その踏切の向こうがいわゆる搬送のための外周道路ですが、ウエスタンリバー鉄道が走るときは、踏切で搬送用のトラックを止め、見えないようにしているのです。しかも、その場所に来ると、汽車の中では「右手をご覧ください~~~」のアナウンスが流れ、ゲストの注意が外周道路のある左側へ行くのを防いでいるのです。こういう工夫もTDRらしいですね。

 

 一方、TDSですが、航空写真でパーク内を見ると驚くべき事実が分かります。グーグルマップでTDS上空の航空写真を拡大して見ると、何と、パークの真ん中あたりに駐車場があり、沢山のトラックが止まっています。しかも、その駐車場と園外が広い道路でつながっているのが分かります。つまり、TDSの中を荷物を積んだトラックが行き来しているということなのです。でも、ゲストはそのことに全く気付きません。何故なら、搬送道路やトラックの駐車スペース、倉庫はゲストの頭の上に造られており、一切ゲストからは見えないように設計されているからです。まさか、TDSの中で頭の上をトラックが通っているって誰も思いませんよね。

 

 ここまでして、バックヤードの仕事をゲストの目に触れさせるまいとしているのですが、ただ、どうしても、キャスト自身が搬送しなければならないようなものもあります。そういう場合は、青いシートで目隠しをして、ゲストに中身が分からないようにして運ばれているんです。

 

 沢山のゲストへ対応するためには、物品のみならず、ゴミの搬送、キャストの送り迎え等、兵站路が不可欠な訳ですが、TDRでは一切そういうような現実をゲストに見せない工夫を様々なところで行い、視覚を外界と遮断することで夢と魔法の国のイメージを守っているのです。