東京ディズニーリゾート(TDR)をビジネスの視点から分析する。

TDRは何故楽しいのか?その仕掛けをTDR好きの筆者が様々な視点からお話しします。

第10回:駐車場にまで行き届いているおもてなしの気持ち

今回は、自動車でTDRを訪れてみます。

TDRの駐車場は2万台が収容できる広大な駐車場です。まず、入口のブースで駐車代金を支払いますが、受付は機械式ではなく、感じの良いキャストが一台一台、丁寧に応対してくれます。そして、入口のゲートを通り抜けると、赤いコーンがきれいに2列に並べてありますので、車はそのコーンで造られた道に沿ってドンドン進んでいくことになります。駐車場は、エリアごとに区分けされ、それぞれのエリアには、M(ミッキー)、D(ドナルド)といったディズニーのキャラクターにちなんだ名称がつけられています。

 

そして、赤いコーンが途切れる場所に来ると、駐車場にいるキャストが、一台一台、大きな身振り手振りで駐車位置まで誘導してくれます。

一般的に大きな駐車場、例えば、ショッピングセンターとか野球場では、駐車場の誘導員が一台一台誘導してくれるっていうことはなく、こちらが空いている場所を見つけて勝手に止めるっていうのが普通です。でも、TDRは違います。キャストが誘導してくれて、きちんと順番に整列して駐車させます。ですから、航空写真で見ると良く分かりますが、車は疎らではなく、キチンと整列して隙間なく止まっていることが確認できます。しかも、一般の駐車場のように、直角ではなく、60度の角度で車が止められています。

 

ここに、ゲストをおもてなしをする仕掛けがあります。

 

まず、60度の駐車角度ですが、これは、ドライバーが車を駐車しやすいように設定されたものです。普通の駐車場のように直角ですと、駐車するのにハンドルを何回も切り替す必要がありますし、出入りも隣の車が気になって窮屈です。折角、楽しもうと思っているところに駐車場で接触事故でも起こすと気持ちが折れますよね。しかし、60度という角度は、止めるにも出るにもすんなりできる角度でドライバーは気を遣わなくて済みます。しかも、誘導員を配置し、一台、一台を整列させて止めることで事故が発生しないように管理しているんです。

 

一般的に駐車場が何故90度に仕切られているかというと、その角度にした方が、土地の無駄がなくなり、収容台数が多くできるからです。ですが、TDRでは、あえてその無駄を承知で、お客様に対するリスク管理とおもてなしを優先するために駐車角度を60度にしています。これも行動規準に沿って考えれられた運用です。

 

更に、広い駐車場で困るのは、用事が終わって駐車場に来た時に、自分の車をどこに止めたか分からなくなることがあることです。特にTDRは20000台を収容できる広大な駐車場ですので、頻繁に起こることだと思います。夜、楽しい思い出を持って帰ろうという時に、自分の車が見つからず、広い駐車場内を家族で、しかも、子供たちは遊び疲れている中、沢山のお土産を抱えてウロウロしなければならない羽目になってしまうと折角の楽しい思い出も台無しですよね。TDRでは、そういうゲストに対してもキチンと対応をしています。もし、自分の車が見つからなかった場合、キャストに尋ねて下さい。キャストはこう答えます。「何時頃に止められましたか?」そして、時間を言えば、その場所に案内してくれます。

 

何故そういうことができるのでしょう?

そこにわざわざ一台一台キャストが誘導して止めさせている効果が発揮されるのです。つまり、整列して止めてあるので、それぞれ区分けされたエリアが何時ごろ満車になったかをキャストがあらかじめ控えているのです。ですから、駐車時間が分かれば大体どの辺りに止めたかをゲストに教えることができるのです。誘導員がおらずに自由に止められる駐車場ではとてもできないことです。一見、非効率に思えるキャストの誘導ですが、このようなゲストへの気遣いにつながっているのです。

 

また、これも良くあることですが、うっかりと車内のライトをつけたままでいたらどうなるでしょう。

 

TDRの駐車場のキャストは、車の見回りもしています。ですから、ライトを点けっぱなしの車を見つけたら、ワイパーに「もしバッテリーがあがっていたら、キャストまでご連絡下さい」というメッセージを書いた紙を挟んでいます。

 

このように駐車場でのキャストの行動を見てみると、キャストは、車の誘導のためだけに居るのではなく、事故防止のリスク管理やお客様へのおもてなしをするために居るのだということが分かります。そして、そのことが単純作業と思われがちな誘導員の仕事を有意義なものにさせ、キャストのモチベーションの向上につながっているのです。こういうとこに、TDR人の使い方のうまさを感じることができます。

 

ほとんどの企業がお客様の駐車場を持っていますが、駐車場の管理にこれほどのコストをかけて気を配っている企業はないと思います。あっても、せいぜい、繁忙時に車の誘導員を外注して配置する程度でしょう。しかし、皆さんも、例えば、週末,レストランなどで駐車場が満車で入れずにそのまま帰ってしまったというようなことや車にライトが点いたままになっていたり、広い駐車場で車を探しているお客さんの姿を見ることがあると思います。その時に、店側が少し気配りをしておけば、お客様を店のファンとすることができるのではないでしょうか?TDRの駐車場の事例は、一見非効率であるようなことでも、ゲストを惹きつけるサービスに変えることができるということを示唆しています。皆さん方も、店内(社内)だけではなく、店の外(社外)へも気を配っては如何でしょう。色んなヒントがあるかもしれません。

 

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*1:※参考までに、あれほど沢山の車が駐車するTDRの駐車場収入はどのくらいあるのか試算してみました。現在、駐車代金は平日2500円、休日3000円となっています。結構な値段です。そして、収容台数は2万台と言われています。これを例えば、平均単価2500円とし、日々20000台の80%が使用されると仮定し、年間営業日数365日で計算すると、年間では、2500円×365日×20000台×80%=146億円という途方もない金額になります。これも、表にはあまり出ませんが、TDRの高収益を支える一つの大きな要因です。