東京ディズニーリゾート(TDR)をビジネスの視点から分析する。

TDRは何故楽しいのか?その仕掛けをTDR好きの筆者が様々な視点からお話しします。

第7回:ウオルト・ディズニーって何者?

ここで、ウオルト・ディズニーのことについて少し触れておきたいと思います。

ウオルト・ディズニーは、このディズニーランドを作った本人であり、彼のコンセプトや理念は、死後50年を経ても、そのまま世界各国のディズニーランドに引き継がれています。ゲストへのおもてなしを始め、パーク運営、人材教育の基本的考え方は全て彼の考えに基づくものです。ですから、彼の生涯を理解することができれば、ディズニーランドの様々な仕掛けの理由がお分かり頂けると思います。

 

ウオルトは、1904年生まれ。イギリスからの貧しい移民の子としてアメリカで生まれました。若い頃は、小さい頃からの夢であった漫画家として活動していましたが、その後、アニメ映画の製作に興味を持ち、銀行員であった兄のロイと二人三脚で映画ビジネスを進めてきました。ウオルトは創造性に富んで、新しいアイデアをどんどん生み出すのですが、そのためのお金については無頓着でした。お客様に喜ばれるものと思えば、自分が満足するまでお金をつぎ込んでアニメの製作を行いました。元銀行員の兄のロイは、堅実な現実派です。ですから、ウオルトの暴走をたしなめながら、うまく資金繰りを行い、何とかアニメの製作資金を捻出し、会社の運営をしてきました。この辺り、日本でもホンダという会社ありますが、本田宗一郎というカリスマ的技術者と藤沢武夫という財務担当者が二人で会社を大きくしてきたことと良く似ています。

 

ウオルトは、たくましい創造力で次々に新しい技術をアニメに導入し、当時としては画期的なアニメ作品を作ってきましたが、残念ながら、当時は、アニメというジャンルがあまり一般的ではなかったため、興行的には不遇でした。そのため、兄のロイはいつも会社の資金繰りに苦労し、倒産寸前に追い込まれたこともありました。しかし、それを救ったのが、1937年に総天然色で造られたアニメ「白雪姫」でした。この大ヒットでディズニー社は窮地を乗り越えることができました。アメリカにあるディズニー本社社屋は、それぞれの柱に、小人たちがまるで建物を支えているように立っていますが、これは、白雪姫の登場人物である小人達がディズニー社を支えてくれたというウオルトの想いを込めたものです。

 

アニメ映画の製作に飽き足らなくなっていたウオルトは、ある日、子供たちと遊園地へ行きました。しかし、その遊園地は、汚くて、しかも、子供が遊ぶ乗り物はありますが、大人たちはベンチで子供の遊ぶのを見ているだけの場所でした。ウオルトは子供も大人も一緒に楽しめる場所が欲しい、それが、ディズニーランドのコンセプトにつながっていきました。そして、そういう理想の遊園地のモデルになったのが、デンマークにあるチボリ公園です。この公園を訪れたディズニーはアメリカでも同様の公園を造りたいと思い、ロサンゼルスの郊外のアナハイムという何もない広大な土地に目を付けてディズニーランドの建設を始めたのです。

 

スポンサーを集める際に、ウオルトは、自分の構想に基づき、同僚のイラストレーターのハーブ・ライマンにイメージ図を描かせました。ウオルトが喋るイメージに基づき、ライアンは数日間でこの図面を仕上げたそうです。アナハイムのディズニーランドホテルのロビーにレプリカが飾ってありますが、素晴らしい図面です。そして、この図面を基にして、ウオルトが投資家を相手にしてプレゼンテーションを行い、見事にスポンサーの獲得をしたのでした。しかし、いつも通りのウオルトの悪い?癖で、創造力は留まることがなく、かつ、完璧主義者でしたので、投資額は当初の450万ドルから700万ドル、そして数か月後には1100万ドルになり、最終的には1700万ドルにまで膨れ上がったのでした。でも、この莫大な投資額も、ディズニーランドの大成功により、回収にはそう時間はかかりませんでした。投資額でいえば、東京ディズニーランドにおいてもそうでした。当初の投資額は1100億円と試算されていましたが、最終的には1800億円まで膨れ上がってしまいました。いづれも、経営者の妥協を許さない意志の強さが感じられる逸話です。

 

ディズニーランドの様々な仕掛けにおいて、最も重要なポイントは、ウオルトがもともと「映画人」であったということです。この「映画人」ということを良く理解しておけば、その仕掛けの秘密が分かってきます。

 

ディズニーランドがそれまでの遊園地と根本的に異なる所以は、ディズニーランドが単なる乗り物を集めた場所ではなく、テーマパークと呼ばれる大きなコンセプトに基づいて全てが作られた場所だということです。つまり、ウオルトは、従来のような乗り物で子供を楽しませるのではなく、ディズニーランドという広大なエリアをステージとし、その中に様々な物語を盛り込み、そこを訪れる全ての人にパーク全体を楽しんでもらう仕掛けを作り上げたということです。ですから、ディズニーランドの園内で、ゲストはさながら映画に入り込んだかのように感じ、自分が映画の主人公になったり、スクリーンに入り込んで楽しんだりすることができるのです。

 

ウオルトは言っています。「ここにいる間、お客さんには現実の世界を見て欲しくない。別の世界に居るのだという実感を持ってほしいのだ。」正に、この言葉がディズニーランドの本質を言い表していると言って過言ではないと思います。