東京ディズニーリゾート(TDR)をビジネスの視点から分析する。

TDRは何故楽しいのか?その仕掛けをTDR好きの筆者が様々な視点からお話しします。

第2回:TDRのビジネスモデルは「夢と魔法の国」

TDRは何故あれだけの人を集め続けることができるのでしょう?

それは、TDRのビジネスモデルが優れているからです。

 

では、そのビジネスモデルとは何でしょう?

 

それは、TDRが「夢と魔法の国だからです」。

 

こういうと、何を当たり前のことを言ってるんだと思われるかもしれませんが、私に言わせれば、これが、正にTDR(正確に言えば、株式会社オリエンタルランド)のビジネスモデルの全てを言い表していると確信しています。

 ただ、そうは言っても、これでは何のことかと思われる方もおられると思いますので、分かり易く説明をします。

 

“夢と魔法の国“ということですが、まず、“夢”って“現実”ではありませんよね。また、“魔法”も同じように“現実”ではありません。つまり両方とも“非現実”ということです。これを言い換えれば、“非日常”といえます。“日常”は現実の社会であり、日々私たちは、この日常の空間で生活しています。その中には、仕事があり、家庭があり、人間関係があり、勉強があり、楽しいこともありますが、苦しいことや嫌なことも沢山あります。しかし、“非日常”の世界に入り込めば、そういう“日常”を忘れて、自分の楽しいことだけを考えれば良い世界が現れます。そして、その世界を提供してくれる場所がTDRなんです。TDRが“非日常”の時間と空間を提供してくれるから、入園した瞬間から現実=日常を忘れ去ることができるのです。非日常空間には、自分の都合の悪いことは一切ありません。楽しいことだけがある空間です。だからこそ人が沢山、しかも、繰り返し集まるのです。

 

事実、ウオルト・ディズニーも次のような言葉を残しています。

「ここにいる間はお客さんには現実の世界を見て欲しくない。別の世界にいるという実感を持って欲しいのだ。」

 

その象徴的な例を2つお話します。

 

はじめは、ゲストの視点からです。

TDRに入園した人たちが、ミッキーの耳をつけたり、キャラクターの被り物をしたり、大きな手袋をしたりしている姿を見かけます。こういう姿を日常の場でしますか?決してしません。これこそ、TDRという場所が非日常であり、夢と魔法の国であるという証拠です。TDRに入園すると魔法にかかるんです。ですから、どんな格好をしてもおかしくないし、逆に楽しい訳です。しかし、この魔法は、園内を出て、舞浜駅から出たあたりから解けだし、現実に戻るんですね。それに気づいた人は、恥ずかしなって、被り物を脱いで荷物の中にしまうことになります。そして、日常の生活に戻って行き、「TDRは楽しかったね。また来よう」となるのです。

 

もう一つ、キャスト目線での話です。これは、元キャストの方がブログに書いておられた素敵な話です。

 

「ある冬の大雪の日でした。ディズニーランドの園内も休園かと思わせるような大雪が積もっていたそうです。その時、上司から、『ジャングルのアドベンチャーランドや古き良き時代のウエスタンランドに雪が積もるはずがないだろ』と当たり前のように言われた一言で、全部除雪し、他のエリアは動線の確保という指示がでて、数百人のキャストが午前中一杯かかって作業を行い、屋根の上は勿論、木の葉っぱまで雪がないようにきれいにしました。それを見たお客さんは驚きの歓声を上げていました。」というお話です。

現実は大雪が積もっているのに、アドベンチャーランドウエスタンランドには雪が全くない。そこにゲストは夢と魔法を感じます。もし、雪が残っていたら、それは、現実を思い出させることになりますから。そして、それに応えるTDRのキャストが素晴らしいですね。

 

そういえば、こういうこともありました。

15年前。フィエスタトロピカールという人気のショーがアドベンチャーランドで行われていました。常夏の国でのショーですので、ダンサーの皆さんは、男性も女性も薄い衣装を纏っただけの姿です。夏は問題ないのですが、寒い冬になっても同じ格好でした。見ているこちらは、コートを羽織って温かくしていたのに、何故、冬用の衣装にしないのかなと思っていましたが、先ほどの大雪の時のことを思うと納得しました。アドベンチャーランドで寒さ対策の衣装を着るということ自体が現実を見せることになるんですね。

 

こういう意識と努力があるから、夢と魔法の国を感じることができるんですね。

 

しかし、その方のブログの最後に、「残念なことにこれは25年前にお話。先日の大雪の日は、パーク内は雪が積もっていました。」とありましたが、ファンとしては、現在もそうであって欲しいのですが・・・。

 

先程、「非日常空間には、自分の都合の悪いことは一切ありません。楽しいことだけがある空間です。」と書きましたが、裏返せば、ゲストをおもてなす側にとっては、ゲストに都合の悪いことは一切あってはならないし、楽しいことだけがある空間にしなければならないということです。そして、それが徹底されているかどうかが、ビジネスモデルを成功に導くかどうかの別れ道です。TDRでは、お客さんに、現実を思い出させず、日常を忘れて楽しんでもらうために、様々な工夫が徹底して行われています。この仕掛けは、既に、園内に入る前から始まり、入園してからは、いわゆる経営資源と言われる「人・モノ・金」の全てに亘って張り巡らされています。その仕掛けを知ることができれば、自分のビジネスに活かすことができます。本ブログではこれから、TDRの様々な仕掛け、取組を取り上げながら、今の会社の経営にどう活かして行くか?商売にどう取り入れて行くかについても縷々お話したいと思います。

 

※最後に閑話休題

 

TDRと同じように非日常の世界をビジネスモデルにしている業種があります。それは、夜の社交場であるクラブやキャバレーの世界です。ここに来れば、誰もが「社長さん」と呼ばれてもてはやされ、綺麗なお姉さんがそばに来て、ちやほやしたり、お酒を注いでくれたり、ニコニコ話しかけてくれたりしてくれます。そして、お客さんは、その世界に酔いしれるのです。正に、お客さんにとっては、非日常の世界であり、バラ色の世界があり、現実から逃避できるのです。だからこそ、世の男性方はこういう場所に通うことになります。女性でしたら、ホストクラブが該当するでしょう。こういう場所とTDRが同じビジネスモデルと言われると奇異に感じるかも知れませんが、本質は一緒なんですね。ただ、この業界、潰れるクラブも多いと聞いていますが、その差は、非日常の世界を徹底して提供できているかどうかの違いだと思います。老舗と言われて歴史の長いクラブは、決してお客さんを現実に引き戻すことがなく、非日常の世界へ入り浸させることがうまい店なんだと思います。